澤口(2010)は〈本線シグナル附きの電信柱〉(=太っちょの電信柱)が何者かについては言及していない。米地(2016)も「最も矛盾に満ちた不自然な性格」であり「該当者不明」としている。しかし,この電信柱は繰り返し登場してくるので脇役とは思えない。多分,この物語は,単なる恋物語ではないような気がする。本稿では,この〈本線シグナル附きの電信柱〉が具体的に誰なのかというよりは,この人物に二重に投影されている得体の知れない者の本性を示すことで賢治が物語で本当に言いたかったことを明らかにする。 1.8年の間,夜昼寝ないで世話できる者とは 物語では〈本線シグナル附きの電信柱〉は鉄道庁の甥であることと,〈シ…