法華経のこの品には、法華七喩のうち「長者窮子の喩え」が書かれています。まずその内容を簡潔にお伝えしたいと思います。 幼い頃に生き別れになった息子を、50年後偶然に見つけた長者の父親が喜んで声をかけたのですが、息子は父とは分からず、それどころか怖がって逃げてしまいました。息子は長年の放浪生活で貧困にあえぎ、身分はカースト外の不可触民(カースト外は奴隷以下となり、もはや人扱いされないレベルの最下層民)にまで落ちていました。そのせいですっかり卑屈になり、身分の高い者や金持ちに会うとひどい目に合わされると思っているのです。そこで父親は一計を案じ、彼をまず最低辺の者の仕事とされる汚物処理係として雇います…