広い広い、際涯もないロシアの大地に出現した怪僧は、なにもラスプーチンばかりではない。 女帝エリザヴェータの治下に於いてもフィリポンと名乗る精神的一大畸形が登場し、怒涛の如く吐き出す鬼論で人心を幻惑、天下を聳動させている。 (Wikipediaより、女帝エリザヴェータ) 彼は自分を預言者と、未来が視える、見て来たのだと触れ廻り、世界の終わり――審判の日は既に間近と盛んに警告。今にして天国の門を潜らなければ皆こぞって地獄に堕ちる、さあ勇気を出して己が命を絶とうじゃないかと、わけのわからぬ「救済法」を提示した。 自殺の奨励なのである。 その方法も、縊れ死んだり服毒自殺じゃあ駄目だ。 炎がいい。 基督…