沖縄市登川のアパート、その部屋は訪問者が多かった。 昼寝をしていると、ベランダから10人ほどの高齢者が入ってくることがあった。 ガラス戸を通り抜けて、私を囲むように、並んで見下ろしてくる。 全員が、戦死をした霊だ。 手に家族写真や思い出のある品などを持っている霊もいて、戦争によって普通の生活が過ごせなかった怒り、家族と離れ離れになった悲しさなどを訴えに来る。 いつも私は彼らが話し終えるまで、ただ聴いていた。 誰かに聴いてもらうことで、少しは心が軽くなるのだろう。 そして、彼らは消えていった。 別の日。 夕方にアパートに戻り、部屋のドアを開けた瞬間、お線香のにおいで驚いた。 玄関を上がると、更に…