高く上がったボールは、それを見上げて追いかける太田の遥か頭上を飛んで、公園の周囲に設置されている植え込みの中に飛び込んだ。一瞬、キャッという悲鳴らしきが聞こえた。植え込みにはちょっとしたギリシャ風のテラスが構えられていて、茂みに囲まれるように椅子代わりのオブジェが幾つか点在していた。きっと座っていた誰かの近くにボールが落ちたのだろう。 ノーバウンドでここに飛び込めばホームランの取り決めだ。中学生はその決まりを知らないが想像はつく。一応はレフト側に走りつつ、ぐるぐると大きなジェスチャーでホームランを宣した。水口の前でええかっこしたいのはこの中学生も同じなのだった。わかっては居るが、意外にわざとら…