一生に一度、たったひとつの物語しか書けないとしたら、なにを書くのか。 (野村美月『下読み男子と投稿女子』ファミ通文庫) これは小説のなかの言葉。 平凡な高校生の青は、出版の仕事をしている朔太郎から、アルバイトを頼まれる。それは、ライトノベル新人賞の「下読み」であった。有名作家が選考するのは最終審査だけで、応募された大量の原稿は、まず「下読み」の人たちによって「一次選考通過」か「落選」かに選別されるのだ。青は応募作を丁寧に読んで、ボツ作品にも親切に助言。やがて青が「A」をつけて上げた原稿は受賞確実だと社内で評判になっていった。 そんなある日、青は応募原稿のなかにクラスメイト・氷ノ宮氷雪の名を見つ…