名誉に殉じた夫婦の覚悟 ― 『葉隠』に見る武家女性の矜持 武士とは、その身にその名を受けた者のみならず、その妻や子、ひいては一門に至るまで、つねに武士としての立ち居振る舞いを求められる存在でございました。 たとえ女性であろうと、あるいは年若き子であろうと、もし武士としての品格を欠くことがあれば、それは家名に泥を塗るも同然とされました。 そのような意識は、戦乱の世が遠のいた江戸の泰平の時代にあっても、なお武家社会に深く根づいており、人々の規範として息づいていたのでございます。 今回は、江戸時代の武士道の教えを伝える書『葉隠』(葉隠聞書)より、ある武士夫妻の逸話をご紹介いたします。 「死を忘れし者…