相性が悪い。 「農家」と「自由貿易」とは、だ。 不倶戴天にすら近い。 自由貿易に反対するのが本邦農家の半分以上、伝統のようになっている。 伝統、そうだ、伝統だ。百年をゆう(・・)に遡る大正時代のむかしから、既に斯かる傾向が立派に表出しているのだから、「伝統」と呼ぶ条件は揃っていると見做される。 (福島の梨売り) 「農業イコール国防」との認識も、先人たちの手によって、とっくに確立済みなのだ。 嘘ではない。 表現を誇張してもない。 当時の帝国農会重鎮、岡田温の意見を叩けば、これは即座に見えてくる。 「我国は耕作に機械を利用する大農地のないことゝ人口が多くて仕事が少いのと肥料や農具や労銀や租税の高い…