その晩は御所で宿直《とのい》もするはずであるが、 夫人の機嫌《きげん》の直っていなかったことを思って、 夜はふけていたが源氏は夫人をなだめるつもりで帰って来ると、 大井の返事を使いが持って来た。 隠すこともできずに源氏は夫人のそばでそれを読んだ。 夫人を不愉快にするようなことも書いてなかったので、 「これを破ってあなたの手で捨ててください。困るからね、 こんな物が散らばっていたりすることはもう 私に似合ったことではないのだからね」 と夫人のほうへそれを出した源氏は、 脇息《きょうそく》によりかかりながら、 心のうちでは大井の姫君が恋しくて、灯《ひ》をながめて、 ものも言わずにじっとしていた。 …