むかし、豚の解体を観た。 直接ではない。ブラウン管のテレビ画面を通してだ。中学生の頃であったか、道徳の時間にドキュメンタリーを流したのである。 ドイツ某所で平和に生きるありきたりな家族らが、飼育していた豚を潰して食糧に――生命(いのち)を物体に加工してゆく、その過程。きびきび動く、慣れた手つきは今も記憶に鮮やかに。カーテンを閉めた教室で、息も忘れて見入ったものだ。あれは気の利いた授業であった。 映像の中、豚が流す紅血を、ドイツ人らは金属製のタライに溜めていたはずだ。なにやら棒で撹拌し、凝固するのを防ぎつつ、あとでミンチに注ぎ混ぜ、ソーセージの中身に使う。番組の題を「一滴の血も活かす」と銘打った…