幸せの定員(創作小説) ***+10*** 山手南口駅をねぐらに決めている南口のコウチャンは、駅のプラットホームにあるゴミ箱の中を覗いている。読み捨てられた週刊誌を探しているのだ。一冊あたり二十円で売れるから、その日は千円ほど稼いだ計算になる。これだけあれば、上等の酒にありつける。その夜のコウチャンはご機嫌だった。毎日一杯のカップ酒を手に入れることさえできれば、それだけでコウチャンは幸せになれる。あとは何もいらない。 コウチャンは駅が好きだ。鉄道も好きだ。バックパックを背負って駅を乗り降りする若者を見るのも好きだった。どんな旅をするんだろう? コウチャンはあれこれ想像し、若かった頃の自分をそこ…