前回の続き。 里人(清少納言)たちの乗った車は、いよいよ内裏に迫っていく。 左衛門の陣のもとに殿上人などあまた立ちて、舎人の弓ども取りて馬どもおどろかし笑ふを、はつかに見入れたれば、立蔀などの見ゆるに、主殿司、女官などの行きちがひたるこそをかしけれ。 「いかばかりなる人、九重をならすらむ」など思ひやらるるに、内にも見るは、いとせばきほどにて、舎人の顔のきぬにあらはれ、まことに黒きに白き物いきつかぬ所は雪のむらむら消え残りたる心地して、いと見苦しく、馬のあがりさわぐなどもいとおそろしう見ゆれば、引き入られてよくも見えず。 河添房江・津島知明 校註、訳「新訂 枕草子」上 (角川ソフィア文庫) 【語…