「薀蓄好きのための格闘噺」 「薀蓄好きのための格闘噺」夢枕獏 格闘技への愛情の深さが感じられるエッセイ集。 特に興味深いのが、「日本書紀」に出てくる当麻蹴速(たいまのけはや)に関する考察と、ジャイアント馬場に関する考察だ。 当麻蹴速といえば「力自慢なのに出雲の野見宿禰(のみのすくね)に蹴り殺された男」という程度の認識しかなかったが、夢枕獏によると、格闘家として非常にかっこいいセリフを残した人物だったようだ。 日本書紀に記述されている「四方に求むに、豈我が力に比ぶ者有らむや。何とかも強力者に遇ひて、死生を期はず、頓に争力すること得てむ」(=この世におれより強い男はいるのか。何とか強い男に出会い、…