心いる 方《かた》なりませば 弓張《ゆみはり》の 月なき空に 迷はましやは 藤花の宴の夜、 朧月夜の姫君を探し当てた源氏の君の歌🪻 〜本当に深くご執心でいらっしゃるのならば、 たとえ月が出ていない空でも 迷うことがありましょうか。 【第8帖 花宴 はなのえん】 「苦しいのにしいられた酒で私は困っています。 もったいないことですが こちらの宮様に はかばっていただく縁故があると思いますから」 妻戸に添った御簾の下から上半身を少し源氏は中へ入れた。 「困ります。あなた様のような尊貴な御身分の方は 親類の縁故などをおっしゃるものではございませんでしょう」 と言う女の様子には、重々しさはないが、 ただ…