七月六日(木)晴「サイパン絶望的なり」 午前鶏の世話をし十時頃外出、溜池の興農公社に寄り、笠原技師に逢う。バターをほしくって来たというと、二ポンドの伝票を出してくれる。定月氏からも二ポンド出してもらい、四ポンド買う。二十二円余である。随分高価だが、杉沢の紹介のおかげで、こうしてバターを買えるのは、ありがたいことだ。バターをこうして買える者は東京に何人もいるとは思われない。闇値では一ポンド二十円というが、三四十円出してもほしい人が多いらしい。 この日朝刊にて、我政府は対支新声明を発し、この度の支那における新軍事行動は英米を討つ目的であって、支那人を敢て敵とするものでない旨を宣言した。またサイパン…