早かった。夕方の散歩に出掛ける時刻の話だ。北鎌倉の線路脇の道を歩く。ほぼ毎日、ここを歩く。東西に延びるここの道は、西陽が良く当たる。夕方六時半くらいまで、ずっと当たっている。ユクが散歩に出掛けたがるものだから出発したものの、西陽射すこちらの道を見て、すまん、ユク坊、と謝った。 べろーん。 それでも、ユクは案外元気にグイグイ歩く。まあ、君が行きたがったのだから、自業自得というものなのだよ。 坂は坂である。 いつものコースを歩く。北鎌倉女子学園に続く急な坂道を上って行く。急な坂道は坂道であって、それだけのことだったよなぁ、といつも考えながら歩く。今では息も上がりやすい。十代の頃は、坂道は坂道だった…