けこの偉大なる真理をよけいに蔵しているのである。なぜなれば、彼らのうちでも金のある富農《クラーク》や百姓泣かせの連中は、すでに大多数堕落しているからである。これは主として、われわれの不注意、不行届きから起ったことである! しかし、神は自分の赤子《せきし》を救って下さるに相違ない、なぜならば、ロシヤの偉大はその謙抑に存するからである。余は空想の中にわが国の未来を見る。いや、もう現に明らかに見えるような思いがする。すなわち、最も堕落せる富者さえも、ついにはおのれの富を恥ずるようになる。すると、貧者はこのへりくだった態度を見て、その心持を理解して彼に譲歩し、悦びと愛をもってその美しき羞恥に答えるであ…
実際ミーチャの手から『横取り』する気でいるという噂をちらほら耳にしていた。ついこの間までこの噂はアリョーシャにとって、もってのほかの奇怪至極なものに思われた。もっとも、非常に気がかりであった。彼は二人の兄を両方とも愛していたので、二人の間のこうした競争が恐ろしくてたまらなかったのである。 そのうちに、昨日ドミートリイが、とつぜん彼に面と向って、自分はかえってイヴァンの競争を悦んでいる、そのほうがいろいろな点において自分のために都合がよいと言った。どうして都合がよいのであろう? グルーシェンカと結婚するためとでもいうのか? しかし、アリョーシャには、こんなことは自暴自棄な最後の手段としか思えなか…