職場の後輩の話である。残業を終えて帰宅すると、五分も経たないうちに玄関のベルが鳴った。インターホンに出ると、「上の階に引越してきた〇〇です」と男性の声。ドアを開けると、大柄な若い男性が立っていた。が、なんだか変。とくに話すこともないから切り上げようとするのに、曖昧な笑みを浮かべたまま立ち去ろうとしないのだ。肩越しに部屋の奥を見られている気がしてドキリとしたとき、誰かが階段を上ってくる足音が聞こえた。男性がそちらに気を取られた隙に、彼女は少々強引にドアを閉めた。「よその家を訪問するには遅すぎる時間だし、帰ってきたのを見ていたかのようなタイミングだし、引越しの挨拶なのに手ぶらだしで、引っかかってた…