『悶々ホルモン』/佐藤和歌子/新潮社/2008年刊 文庫版『悶々ホルモン』/佐藤和歌子/新潮社/2011年刊 母校で週に一コマの非常勤講師をしていた頃、「ワカコ先生の本が市立図書館で点字本になっていましたよ」と言って実物を見せてくれた生徒さんがいた。私を喜ばせようと思って、わざわざ借りて持ってきてくれたんだと思う。それなのに私は、「アナタは目が見えるんだから借りちゃダメじゃん」などと茶化してしまった。あのとき、お礼くらいはちゃんと言えただろうかと今になって気になっている。 白い表紙の中央の点字を指でなぞってみたけれど、私にはそれが自著のタイトルかどうかさえわからなかった(もしかすると著者名だっ…