「指鬘外道」作曲所感 山田耕作 此の春白蓮夫人の『指鬘外道』が東京で上演されると云ふ事を、露風氏を通じて聞きました、その劇中の『夢の歌』は私に作曲せよとの露風氏の言葉もありましたので、私は臺本の出るのを待ちかねて熟読したすゑその歌は三月末頃書きあげました。私は劇中に用ひらる々歌について平素から、ある主張を持って居りました。それは在來の用法のやうに唯その所演の景物的に附せれるゝやうなものならば、むしろ歌は、ない方が好い、それに全々歌を要さないやうな戯曲に、ある一つのしゃれけから音樂を加へる事の惡い事もーれはイブセンの言行を待たずとも誰にも明かにわかる筈です。 御承知の通り、イブセンは劇の中から音…