歴史には運命の不思議がある。運命の皮肉もある。それぞれの運命の糸が紡がれていく。 豊後大友吉統、土佐長宗我部元親、薩摩島津義弘、伊予来島通総については後述するとして、まずは豊後佐伯地方を治めた佐伯氏とその後の毛利氏を見る。豊後大神姓佐伯氏の四百年の幕引きをした最期の当主佐伯惟定、その後の佐伯地方の領主であり270年の治世への佐伯藩祖毛利高政、両者の間に運命の不思議がある。 高政が豊後日田から佐伯に転封してきた時には既に惟定は去っていて互いの邂逅は無い。それまでに両者が出会う機会があったとすれば、唯一、文禄慶長の役においてであろう。 高政は遠く尾張に生まれ18歳の時に秀吉の近習となり、やがて播磨…