沼野 同じイベントかはわからないのですが、渋谷の小劇場ジャン・ジャンに五木さんが登壇されたとき、満員になった会場入り口で、強引に入ろうとするお客さんを追い払っていたのが、当時まだ学生だったわたしでした。消防法の規制で、定員以上入れてはいけないというんですね。五木さんがなにを話されたか、じつは恥ずかしながらほとんど覚えていないんですが、ひとつ鮮やかに焼きついたシーンがあります。五木さんが学生時代から好きだったロシア語の詩の一節を口にされ、「だれの詩かわからなくなってしまったのだけれども」とおっしゃると、司会の江川卓さんが、「それはレールモントフです」とすかさず答えたんです。 そのやりとりを見てひ…