ーーーー講義録始めーーーー 結核の概要と歴史的流行 結核は、抗酸菌である結核菌(Mycobacterium tuberculosis)による感染症で、典型的には肺結核として現れますが、全身に感染する可能性もあります。かつては最も多くの人命を奪った病気のひとつであり、19世紀初期には、世界の死因の約2割を占めていたという報告もあります。たとえば、ドイツ・ハイデルベルクで発掘された約9000年前の人骨の第4および第5胸椎には、結核カリエス(結核性の骨破壊)の跡が認められており、結核が人類とともに古くから存在していたことが示唆されています。 18世紀のイギリスにおいては、産業革命に伴い都市への人口集…