昨日の続きです。 今練習中の朗読題材《晩春(岡本かの子)》ですが、1ヶ所なんと呼んでいいかわからない箇所があります。 うっとりとした晩春の空気を驚かして西隣に在る製板所の丸鋸が、けたたましい音を立てて材木を噛じり始めた。その音が自分の頭から体を真二つに引き裂くように感じて鈴子は思わず顔が赤くなり、幾分ゆるめていた体を引き締め、開きめの両膝をぴったりと付ける、とたんにもくもくと眼近くの堀の底から濁りが起ってボラのような泥色の魚がすっと通り過ぎた。鈴子は息を呑のんで、今一度、その魚の現われて来るのを待ち構えた。 出典:https://www.aozora.gr.jp/cards/000076/fi…