市川崑監督の1960年の作品『ぼんち』は、『白い巨塔』や『華麗なる一族』で知られる山崎豊子の同名小説を原作に、大阪船場のぼんちという宿命を負った一人の青年の生きざまを描いた作品だ。四代続いた船場の足袋問屋の一人息子・喜久治を市川雷蔵が軽妙に演じている。 若尾文子、京マチ子、中村玉緒、山田五十鈴等、大映の看板女優が勢ぞろいし、他にも草笛光子、越路吹雪等が出演。喜久治の人生に関わる様々な女性たちとの関係を通して、明治から昭和初期にかけての大阪の商人文化や時代の変化が綴られる。 “ぼんち”とは、浪速言葉で若旦那の意味だが、器の大きいぼっちゃんという意味もあり、本作では「放蕩の限りを尽くしても帳尻が合…