ジャン・グレミヨン(Jean Grémillon)による1941年作『曳き船(REMORQUES)』について。 幸福に満ちた船員の結婚式を映すカメラは、ぐるぐると忙しなく回るように移動し続ける。カットも不安定に切り替わり続ける。カメラの移動はなぜか上下に弧を描くように行われる。光に満ちた結婚式のシーンから突如、暗闇の一本道を走り抜けるバイクのショットに切り替わる。音響としても、話し声がホワイトノイズのように心地よく響いていたところを、ジャーっという何か異様な走行音が切り裂くように響く。バイクの到着と共に式場に嵐が訪れ、その嫌な予感からシームレスに、結婚式に出ていた船員達は嵐に巻き込まれた船の救…