姫とボクの 01 思えばずいぶんと遠くまで来た。姫との新天地を求めて、元の王国からだいぶ離れたこの、小さな港町。 「ここにしようよ」「森の中じゃないけど?」「んーん。近くに森も山もあるし、それに」「?」「王子と一緒だから!」 そう言った姫は、パッと花が咲くように笑って。照れくさそうに、もう一度笑った。ボクも目を閉じ微笑んで、うなずいた。そして始めた新生活。日記の代わりにも、その暮らしをこうして書いていきたいと思う。 それにしてもまったく。この町のはずれ、森とのさかいめあたり、格安の物件を購入して安寧な暮らしを始め。なんだかんだと一年は経とうとしているころ。どこから嗅ぎつけたのか、父や母から手紙…