私はフランク・ロイド・ライトの建築が好きだ。なぜかといえば「かっこいい」からだ。「かっこいい」――なんという子供じみた言葉であろうか。であるが、実感なのだから仕方がない。しかしライトの建築は、軍艦、飛行機、あるいは未来的宇宙ステーションの想像図といった男児が喜ぶような「かっこいい」ものを連想させるところがある。案外と『かっこいい』という表現は、ライト自身が自分の建築に名づけた「有機的建築」の本質をついているかもしれないのだ。 実際のところ、初期の代表作プレーリーハウスの傑作「ロビー邸」(1906年:下図)は、近所の人たちから「戦艦」(一説には蒸気船)と呼ばれていたという。 確かに水平に低く伸び…