わたしが若かったころですから、ずいぶん昔になります。身動きもままならない大都市の非人道的?な通勤電車は別として、ふつうの電車内では、吊り革につかまりながら大人たちが器用に新聞を広げ、学生や高校生は参考書か文庫本を読んでいました。 活字を追いながら、降りるべき駅と時間はしっかり意識にあって、だれも乗り過ごしたりはしません。そそくさと新聞や本をしまい、人の流れに乗ってホームに降りる。1日はそんなふうに始まり、わたしもそんな光景の中の一人でした。 いま電車に乗れば、老いも若きも見つめているのはスマホです。もう少し時代が進めば、みんなサングラス型のウェアラブル端末をかけ、黙々と前を見ているようで、実は…