「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」というのは川端康成の名作『雪国』冒頭の一節だが、長い坂道を上りきると、そこはやっぱり坂道だった――ということが、金沢ではよくある。金沢市は石川県の県庁所在地。「石川」にはピンとこなくても、「金沢」であれば「知ってる!」「行ってみたい」という人は多いだろう。そんな金沢市は坂の多い町である。加えて前回で取り上げた「雨」も多く、人は必然的に移動を車に頼ることになるのだが、一方で旧い町並みや歴史的遺産がところどころに散在していて、そうした風情の一つひとつは徒歩でなくては目にとまらない。車だと論外、一瞬で通りすぎてしまう。歩いて初めて知る魅力の、なんと多い町で…