本稿では童話『二十六夜』に登場する捨身菩薩・疾翔大力の弟子である〈爾迦夷〉が誰をイメージして創作されているのかについて考察する。童話で梟(ふくろう)の坊さんは〈爾迦夷〉を以下のように説明している。 爾迦夷といふはこのとき我等と同様梟ぢゃ。われらのご先祖と,一緒にお棲(すま)ひなされたお方ぢゃ。今でも爾迦夷上人(しゃうにん)と申しあげて,毎月十三日がご命日ぢゃ。いづれの家でも,梟の限りは,十三日には楢(なら)の木の葉を取(と)て参(まゐ)て,爾迦夷上人さまにさしあげるといふことをやるぢゃ,これは爾迦夷さまが楢の木にお棲ひなされたからぢゃ。この爾迦夷さまは,早くから梟の身のあさましいことをご覚悟遊…