(てんぽう・かいそでん)1997年(明30)大川屋書店刊。上下2巻。江戸時代の有名な義賊・鼠小僧治郎吉の一代記を名講談師・松林伯圓(しょうりん・はくえん)が口演したのを速記した本になる。この他にも白浪物という怪盗たちを演題に上げたのが当時の聴衆に大好評で、俗に「泥棒伯圓」という仇名がついた。鼠小僧の少年期を含むいくつかのエピソードをまとめた長編になるが、丁寧な語りながらもあまり脱線せず、話をうまく落としどころにもっていく手腕は流石だった。特に借金や賭博の負けに加えて、身代金から義援金まで重なって、一度に大金が必要に迫られての絶体絶命の局面から、一挙にそれを片づける鮮やかさには、フランスのルパン…