毒百合:橋本埋木庵 1915年(大4)樋口隆文館刊、前後終全3篇。 二つの筋が織り交ぜになった構成になっている。一つは美人の毒婦の半生記、もう一つは富豪商家の身上の乗っ取りを図る男の悪知恵の成功談である。幼い孤児は出会った大人の後を付き従うこと以外に生きる道はない。性悪な女に拾われたことがその子の性格や道徳観に影響を及ぼす。さらに女性にとって、美貌はオールマイティな力を発揮する。それが窃盗であろうと詐欺であろうと恐喝であろうと、そして殺人さえも、罪状を寛容する心理に陥る男の弱みがある。小説では悪の繫栄で終わることに満足しない。悪を失墜させる何らかの懲罰が必要になる。彼らを追い込む警察の活躍はあ…