花のいのちはみじかくて苦しきことのみ多かりき 林芙美子はこの詩句を好んで色紙に書いたといわれている。人生の悲哀を含んだ、いかにも女性作家らしいきれいな詩句である。 ただし、この場合の「生」は、ただの人生ではない。花と咲いて花と生きた女の人生である。そこには派手な花もあるだろうが、人知られず苦労を重ねて咲いた花も多いのに違いない。いろいろな生き方の花が重ねられているのだ。 因みに、この詩句にはいくつかのバリエーションが存在するようで、『赤毛のアン』の翻訳者・村岡花子氏に贈られた詩の中では、その前後にも詩句が書かれていて、こちらが色紙の言葉の原文ではないかとも云われている。 風も吹くなり 雲も光る…