楸邨

踏青 とうせい 晩春 生活 関連季語 青き踏む 野遊び 中国の古い風習にならって、旧暦3月3日に野に出て青草を踏み、 宴を開いたことに由来する。 現在ではその日に限らず、春の野を散策すること。 野原で遊ぶ「野遊び」と同義としてもいいが、 「踏青」には、萌え出た緑の豊かな色調や、それを素足で踏む感触のイメージも 備わっている。 青き踏む左右の手左右の子にあたへ 加藤楸邨 子どもとつなぐ左右の手、春の野をゆく、 弾むような親子の姿がやさしく見えてくる。 まあ、そうはいっても、うちの下の孫は手もつなぎたくないし、背中支えてても 振り払われるし、広いとこならなおさら、一人で歩きたがる。 上の孫はすぐに…

冬至に冬薔薇の二句が浮かび出る。生きることの二つの側面が描き出されている。 生誕の日や冬薔薇の紅の檄（楠本憲吉） 病む瞳には眩しきものか冬薔薇（加藤楸邨） 相澤啓三の詩集『冬至の薔薇』（書肆山田、2010）は巻頭を飾る「冬至の薔薇」から始まり、巻末に置かれたのは「まだ見ぬかたの花」。西行の「吉野山こぞのしをりの道かへてまだ見ぬかたの花を尋ねむ（吉野山の去年の花見のとき、目印のため枝を折っておいた道をかえて、今年はまだ見たことのない方面の桜を尋ねよう）」（新古今和歌集）の歌をうけて、「まだ見ぬかたの花」の詩がラストを飾る。

①旅に病で夢は枯野をかけ廻る 松尾芭蕉 ②易水に葱流るる寒さかな 与謝蕪村 ③是がまあつひの栖か雪五尺 小林一茶 ④降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男 ⑤人間の海鼠となりて冬籠る 寺田寅彦 ⑥女を見連れの男を見て師走 高浜虚子 ⑦寒雷やびりりびりりと真夜の玻璃 加藤楸邨 ⑧みちのくの雪深ければ雪女郎 山口青邨 ⑨耳も目も確かに年の暮るるなり 阿部みどり女 ➉マスクして振り返るには来過ぎたる 岡本眸

初雪や水仙の葉のたはむまで 松尾芭蕉 我が雪とおもへばかろし笠の上 宝井其角 せわしなく暮れ行く老の短き日 高浜虚子 生きてあれ冬の北斗の柄の下に 加藤楸邨 海に出て木枯し帰るところなし 山口誓子 原爆図中口あくわれも口あく寒 加藤楸邨 疑ひは人間にあり雪の闇 平井照敏 降る雪や明治は遠くなりにけり 中村草田男 小春日の母の心に父住める 深見けん二 雪月花すべては恋にほかならず 下田明子

2024年9月に発売された拙書「受容から創造へ 文学・芸術に導かれて」の目次です。第１章 日本文学 夏目漱石『こころ』 子規への返信 谷崎潤一郎 音曲の活用 永井荷風 もうひとつの『断腸亭日乗』 堀辰雄『風立ちぬ』に誤訳はあるか 村上春樹『羊をめぐる冒険』における名付け 私の好きな俳句 加藤楸邨と芭蕉 コラム コロナ禍の日々：酉の市招福熊手、パン生地、母第２章 フランス文学 マルセル・プルースト『失われた時を求めて』 応答的創造のほうへ 1. コンブレの就寝劇 2. 恋人アルベルチーヌ もうひとつの愛 3. ゲルマント公爵家と主人公 4. 立ち広がる新しい小説世界 コラム プルーストの文はなぜ…