模範家庭文庫のシリーズのなかにある中島孤島編『弓張月物語』については、挿絵画家の小村雪岱の記事のところで触れたが、あらためて『弓張月物語』とはどういうものかについてもここで触れておきたい。 『弓張月物語』とは、江戸時代の文化年間に刊行された曲亭馬琴/作 葛飾北斎/画『椿説(ちんせつ)弓張月』という読本をもとにした物語である。 ※読本とは、江戸時代後期に流行した長編小説のことで、中国や日本の古典的な伝承や、説話などを題材に取り、作者独自の想像を交えて書かれたもの いわゆる勧善懲悪の伝奇物語であり、『南総里見八犬伝』とならぶ曲亭馬琴の代表作である。 物語の時代背景は平安時代末期。主人公鎮西八郎為朝…