水域 (講談社文庫)作者:椎名 誠講談社Amazon 椎名誠が1990年に発表した「SF三部作」(『アド・バード』『水域』『武装島田倉庫』)の第二作。三部作とはいっても、なんらかの破局が訪れた後の終末的な雰囲気を共有している程度で、それぞれ独立した作品である。文庫の解説によれば、高橋源一郎はこの三部作の完結を「文学界における一九九〇年の三大事件」の一つと呼んだそうだ。 ハルは真ん中に小さな小屋のある粗末な舟で水流を漂う生活を送っている。どうも地球規模の気候変動か何かで、陸地という陸地が水に覆われてしまったようなのだ。いつどのようにしてこんなことになってしまったのか、小説は何も説明しない。読者は…