優曇華《うどんげ》の 花まち得たる ここちして 深山《みやま》桜 に目こそ移らね 〜源氏の君の来訪は、 優曇華 うどんげの花が咲いたかのような心地がして、 山桜には目もとまりません。 ✳︎優曇華→インドの想像上の植物。三千年に一度 花が咲くという。 🪷第5帖 若紫🪷 京から源氏の迎えの一行が山へ着いて、 病気の全快された喜びが述べられ 御所のお使いも来た。 僧都は珍客のためによい菓子を種々《くさぐさ》作らせ、 渓間《たにま》へまでも珍しい料理の材料を求めに 人を出して 饗応《きょうおう》に骨を折った。 「まだ今年じゅうは山籠《やまごも》りのお誓いがしてあって、 お帰りの際に京までお送りしたいの…