源氏の御弟の宮たちそのほか親しかった高官たちは 初めのころしきりに源氏と文通をしたものである。 人の身にしむ詩歌が取りかわされて、 それらの源氏の作が世上にほめられることは 非常に太后のお気に召さないことであった。 「勅勘を受けた人というものは、 自由に普通の人らしく生活することができないものなのだ。 風流な家に住んで現代を誹謗《ひぼう》して 鹿を馬だと言おうとする人間に阿《おもね》る者がある」 とお言いになって、 報復の手の伸びて来ることを迷惑に思う人たちは警戒して、 もう消息を近来しなくなった。 【源氏物語 第十二帖 須磨(すま)】 朧月夜との仲が発覚し、追いつめられた光源氏は 後見する東…