いづれの御時にか、 女御更衣あまたさぶらひたまひける中に、 いとやむごとなき際にはあらぬが、 すぐれて時めきたまふありけり。 はじめより我はと思ひあがりたまへる御方々、 めざましきものにおとしめそねみたまふ。 同じほど、それより下臈の更衣たちは、ましてやすからず。 どの天皇様の御代《みよ》であったか、 女御《にょご》とか更衣《こうい》とかいわれる後宮がおおぜいいた中に、 最上の貴族出身ではないが 深い御愛寵《あいちょう》を得ている人があった。 最初から自分こそはという自信と、 親兄弟の勢力に恃《たの》む所があって 宮中にはいった女御たちからは失敬な女としてねたまれた。 その人と同等、 もしくは…