近在の「切畑」という集落から、鉱泉宿に勤めに出きていた園は二十四歳。竹部の演習林とは意外な縁がありました。 「あんた、うちの山知ってはりますのんか」 「・・・小っちゃいじぶんから、トンネルくぐって、桃やらあけびやら、さくらんぼとりに、むかしは学校からすぐ、竹部山へあそびにいったりしたもんどす」 演習林=亦楽山荘 の案内地図 園の幼少期の遊び場でもありました 「あんたが犯人やったんか」 竹部は奥に金冠ののぞく口をあけて大笑いした。別に、この日、園というこの女中が、ふたりに、ふかい印象をあたえたわけでもなかった。帰りしな、玄関へ送ってきた古株の女中から、 「ええ娘さんどっしゃろ、先生。・・・あの娘…