「世界の歴史には愚かな連中が勇気を持ち、賢い人たちが臆病だった時代がいくらもあります。これは正しいことではありません。勇気ある人たちが賢く、賢い人たちが勇気を持った時初めて、人類の進歩が見られるようになるでしょう」。これは、『点子ちゃんとアントン』や『飛ぶ教室』で知られるドイツの詩人・作家、エーリッヒ・ケストナー(1899~1974)が『飛ぶ教室』(講談社文庫)の前書き(その2)に書いた言葉だ。この本はヒトラーが政権を取った1933年に出版されており、これはナチス時代に対する警告の言葉といわれる。しかし、90年を経た現代の世界は、残念なことにこの言葉と似た時代になっているように思えてならない。…