【平家物語68 第3巻 無文の太刀】 重盛は、 未来を予見する不思議な能力を持っていた。 これは生前の話であるが、 ある夜、重盛は夢を見た。 場所ははっきりとはわからないが、 どこかの浜辺を歩いていると、 道の傍に大きな鳥居がある。 「これは、どこの鳥居だろうか?」 と道ゆく人に聞いてみると、 春日大明神の鳥居ですと答えた。 鳥居の周辺には、何やら人が集って騒いでいる。 よくみると、その中に、 坊主頭の首を高々とさしあげている男がいた。 あの首は、一体誰のか、といって尋ねると、 「これは、平家の清盛公の首じゃ、 あまりにも悪行が過ぎ、当社の大明神によって、 召し捕られたのじゃ」 と答えるものが…