新型コロナウイルスに翻弄された今年ものこるところひと月。師走の歌舞伎座も再開以来の四部制である。その第二部をまずは観る。 『心中月夜星野屋』は二年前の納涼歌舞伎に初演された新作歌舞伎。昨年は金丸座で、そして今年は歌舞伎座でと、新作としては異例なペースで再演をかさねている。ひとつには今年度はじっくり稽古して新しい作品に挑むことが許されないため、出演者も少なくすでにできあがっているコンテンツを、ということもあるだろう。またどうじに、この『星野屋』を歌舞伎のあたらしいレパートリーとして定着させようという、作り手の意志も感じられる。 一昨年の初演のときも、そのシンプルで効果的な構成のよさは際立っており…