二十代の半ば、英国に一ヶ月間滞在した。留学でも何でもない。会社を辞めて無職となり、自由な時間を創出して、海外に飛び出したのだった。会社は入社してからずっと辛かった。会社の人たちは、先輩も同僚もとても良い人ばかりで、仲良くさせてもらった。嫌だったのは敷かれたレールに載っかっているような自分自身だったのだろう。 レールに載るのはごめんだ。 音楽で食べて行きたいと考えていた。しかし、真剣に売ること、売れることは考えていなかった。そこが矛盾している。音楽をビジネスとして話す「業界」の人たちのことを毛嫌いしていた。売れなければ食べて行けないのに。そういう妙な純粋さが音楽で身を立てられなかった大きな要因で…