お土産にいただいた柿の、これが最後の一個だ。私の握りこぶしほどもある、巨きな柿だった。色艶も、これが柿の見本ですと云いたくなるような、立派なものだった。一日に一個以上はいただけなかった。で、今月の四日にいただいて、これが最後である。 心やすい来訪者でもあれば、あるいは親しいかたをお訪ねする機会でもあれば、コレいただきもんなんだけどと、お渡しするにやぶさかでなかった。いわゆるお裾分けである。が、思い返してみるとこの間、食糧の買出しと銭湯以外に、人さまと口をきく機会もなかった。しかも柿がなければ、さようなことにも気づかなかったろう。 これまでの国勢調査によれば、六十五歳以上の独り暮し世帯が二割を超…