「御好意はうれしいのですが、 人並みの人にもなれない私はこのままここで死んで行くのが 何よりもよく似合うことだろうと思います」 とだけ末摘花は言う。 「それはそうお思いになるのはごもっともですが、 生きている人間であって、 こんなひどい場所に住んでいるのなどはほかにめったにないでしょう。 大将さんが修繕をしてくだすったら、 またもう一度玉の台《うてな》にもなるでしょうと期待されますがね。 近ごろはどうしたことでしょう、 兵部卿《ひょうぶきょう》の宮の姫君のほかはだ れも嫌いになっておしまいになったふうですね。 昔から恋愛関係をたくさん持っていらっしゃった方でしたが、 それも皆 清算しておしまい…