三十日の夕方に宮家から贈った衣箱の中へ、 源氏が他から贈られた白い小袖の一重ね、 赤紫の織物の上衣《うわぎ》、 そのほかにも山吹色とかいろいろな物を入れたのを 命婦が持たせてよこした。 「こちらでお作りになったのがよい色じゃなかったという あてつけの意味があるのではないでしょうか」 と一人の女房が言うように、 だれも常識で考えてそうとれるのであるが、 「でもあれだって赤くて、重々しいできばえでしたよ。 まさかこちらの好意がむだになるということはないはずですよ」 老いた女どもはそう決めてしまった。 「お歌だってこちらのは意味が強く 徹底しておできになっていましたよ。 御返歌は技巧が勝ち過ぎてます…