商人の仕事は金儲けだ。 守銭奴が彼らの本質である。 世界に偏在する富を、己が手元に掻き集めること、一円一銭一厘たりとも忽(ゆるが)せにせず、より多く。それ以外にない、ある筈もない。またそうしてこそ、それに徹してみせてこそ、敏腕とも呼ばれ得るのではないか。 (強欲な鳥) 「明治を代表する個人」、福澤諭吉はいみじくも言った、 「商売は何のために営むものに御座候。其目的は利を博し富を得るより外には有之間敷(これあるまじく)候。人間の幸福は富ならでは買ふべからず、人生七十古来稀、幸福を享くべき時限も極めて短きものに候へば、富を得るの工夫も十分に精神を込め、大急ぎに急がざれば間に合ひ兼る事と存じ候」 と…