夏越し それは酷烈な季節であった。なんて文学的な述懐をこのところ毎年のように繰り返さねばならない。遮光したって地べたからの輻射を免れるわけではない。日に三度の水やりは茹で釜と化した鉢を冷まさんがためでもある。挙句の果てには鉢ごと土中に埋めてみたり、二、三日家を空けるならノアの箱舟、軽トラックに棚ごと乗せて疎開する。 ヒグラシの鳴く頃、早い湯をつかい、庭へ出る。ようやく和らいだ暑気に夕風がいたり、棚の樹も人間も安らいだ吐息をはく。冬越し 盆樹の活動期間はプロ野球選手のそれとほとんど一緒である。秋のシーズンも終わるころに展示会の大舞台を勤め上げると、彼らはオフに入る。ハワイへバカンスとまではいかな…